かめのあきのゲームブログ

好きなタイトルを中心に、レビューや思い出を画像多めで書き綴ります。

「風来のシレンGB 月影村の怪物」SFC版と遜色ないゲーム性と、引き込まれるストーリーを引っ提げて登場した携帯機初シレン

ゲームにおける面白さとは、

そのジャンル(アクション・RPG等)に基づいた、ゲーム性そのものの面白さと、

ストーリー的な引き込みと結末、すなわち物語面での面白さという、

二つの要素に大別されるかと思われます。

 

総じて、どちらかの要素が際立って突出している作品、

又はどちらもが高い水準に達している作品が、名作・良作として心に残りやすいのでしょう。

(BGMや、作品そのもののセンスといった要素も重要ですが、今回は除外して考えるものとします。)

 

 

そして中には、ジャンル的にはそれほど物語の要素を必要とされないにも関わらず、

一工夫あるストーリーと結末によって、心に残る仕掛けを施した作品も存在しています。

 

今回ご紹介するのは、私にとってのそんな作品。

風来のシレンGB 月影村の怪物です。

 

 

白黒ゲームボーイにて、1996年11月に発売。

 

前作のSFC版「風来のシレン」の大ヒットを受け、それから約一年後に登場した続編で、

製作元チュンソフトにおける、初めての携帯機参入ソフトにあたるようです。

 

 

ゲーム内における全ての音楽が、SFC版で使われた楽曲のGB音源アレンジとなっている事と、

「やさしい」「ふつう」「むずかしい」からなる難易度を選んで開始でき、作中でも拠点となる村にて変更できる点が大きな特徴でありつつ、

 

不思議のダンジョンというゲームシステムを、最善を尽くしてGBソフトという媒体に落とし込んでおり、

容量や制約の都合から、モンスターやアイテム、操作性などの面で、SFC版から削除・変更された点は数あれど、

ゲームとしての質は全く損なわれておらず、携帯機初のシリーズ作にして、シンプルながら奥深い面白さと、高い完成度を実現しています。

 

 

物語は、前作にて黄金のコンドルを救出した風来人シレンが、

なにやら「オロチ」という怪物に、村の子供を差し出すシキタリがあるとされる「月影村」にて、

「フミ」という少女を生け贄に差し出し、悲嘆に暮れている母親を目の当たりにするところからスタート。

 

フミを助けんと飛び出した、その幼馴染みの少年「ナギ」を追って、

「供養峠」と呼ばれるダンジョンに挑む事となります。

 

 

情に訴えかける、極めて王道でシンプルな導入ながらも、

村を出発する際には、その村人達から↑の画像のような不穏なセリフを聞かされ、

 

「この村、ひいてはここに住む人達には、何か秘密があるのか?」と、

物語の先を気にさせる作りが施されており、自ずと攻略意欲を掻き立てられます。

 

 

供養峠で倒されて村に戻ると、ケヤキという少女が看病してくれた上、

再び出発する際には”やくそう”を始めとした様々なアイテムを渡してくれるという、

前作にはなかった、”ヒロイン役の少女との交流”を描いたイベントも展開されます。

 

(何度か倒される事で、彼女が拾って育てていた猫の「タンモモ」を託され、

前作の「ペケジ」同様、段々と強くなっていく旅仲間として同行するようになります。)

 

 

フロア10に辿り着くと、当初の目的であったナギの姿を発見。

 

彼に代わってフミを助けるという約束を交わした後、

もと来た道を戻って、村まで連れて帰る事となります。

 

 

ナギを村へと連れて帰った翌日、

薬売りの「ヨシゾウタ」と名乗る男が宿屋にやって来ており、しばし話し込む事に。

 

シレンを応援する気さくな人物のようですが、果たしてその目的とは。

 

 

そして、宿屋を出た瞬間、

村の中に、モンスター「コドモ戦車」の姿が・・・!!!

 

その姿を追おうとしても、すぐに立ち去ってしまう為、

プレイヤーの心に大きな疑念を抱かせる、かなり強烈なシーンです。

 

 

そうして、再び供養峠に赴き、

今度は、フロア15「竜の顎(あぎと)」と呼ばれる場所の入り口地点にて、

はぐれていた語りイタチの「コッパ」と再会。

 

 

事の成り行きを話し、先へと進もうとするも、現時点ではその入り口は閉ざされており、

「供養峠で怪物にやられたら シレンは村に戻されるんだろ?

 だったら そのナギという子だって やられるだけで村に帰って来れるハズじゃないのか?

 なのに 村人はなんだって『二度と帰って来れねえ』なんて言うんだよ?」

 

と、コッパが冴えた事を言い始め、

生け贄のシキタリや、村で見かけたコドモ戦車、村の神社の名前などからも、

月影村には絶対に何か秘密があるとして、再び戻る流れとなります。

 

(ナギの時と同様、もと来た道を引き返し始めますが、やられて戻る”デスルーラ”も可能です。)

 

 

月影村へと戻り、村長(むらおさ)に話を聞こうと訪ねると、

「あなたが聞きたい事はわかっとるつもりです。今晩ここに来てくだされ」と伝えられ、

宿屋で夜まで休んだ後、やけに静まり帰った夜道を歩きつつ、再び彼の家を訪れます。

 

 

・・・ すると・・・ ・・・

 

 

なんとそこには、

モンスターの姿と化した村人達の姿が。

 

(この時、モンスターハウス”のBGMが一瞬だけ流れるのが良い味出してます。)

 

 

しかし、その姿でも理性はあるらしく、話を聞くと、

月影村の人々は、その名の如く”月影(月の光)”を浴びると変身する体質を持った一族であり、

その為、このような人目の付かない場所に隠れ住んでいるとの事。

 

(子供の頃は発作が起きるだけで変身してしまい、理性も記憶もなくなるらしく、

日中に見たコドモ戦車は村の子供だったという事のようです。)

 

 

また、「オロチ」の件・生け贄の件・供養峠の件については詳細に話す事はできないが、

神社の賽銭箱の下に”巻物”があり、それを読めば竜の顎は開かれるであろう事を教えられ、

フミの救出、ひいては生け贄のシキタリを断ち切る事を託されるのでした。

 

 

早速、その名を「鳴き竜神社」と言う、村の神社の賽銭箱を調べるも、

巻物は見つかりません。

 

誰かが持ち去ってしまったのか、はたまたデタラメなのか。

 

 

翌日、村長から話を聞くと、

巻物は前日までは確かにあったらしい事と、

 

昨晩、竜の顎へと向かう人影が目撃されていた事を伝えられ、

「ふつう」「むずかしい」の道のり(難易度)で追いかけてみる事を奨められました。

 

 

(ちなみに、この時点からコッパの通訳によって、村に居る「ニワトリ」と犬の「ポチ」を旅仲間に引き入れられるようになり、

それぞれ、特殊な効果を持つ”たまご”を産む、おしっこをして様々な”種・草アイテム”を生やすという固有の能力を持ち、強力な味方として活躍してくれます。)

 

 

再び竜の顎へとやって来ると、

以前に一度、村の宿屋で会った「ヨシゾウタ」が現れ、

 

シレンと村長の話を外で全部聞いて、面白そうだったから巻物を取って先に来ていたが、一人で行くのは怖そうだから待っていた」という旨を語った後、

彼が巻物を読み、無事にその入り口が開かれます。

 

 

「先に行っててくれよ。おれは後から追い付くからよ」と言うヨシゾウタを尻目に、

フミを救出すべく、奥地へと向かうシレン

 

 

そうして、フロア21となる「オロチの魔窟」にて、

今回の旅の元凶である「オロチ」の姿を探すも、見当たりません。

 

コッパが「オロチって どこだ?」と口にすると・・・

 

 

「ここだよ」

と言って、ヨシゾウタが現れます。

 

 

ここ一帯の変則地形、すなわち不思議のダンジョン”の魔力を我が物とするべく画策していた彼は、

月影村の子供達に自分が作った薬を飲ませて、怪物の姿に固定させて言う事を聞かせていた事(つまり、シレンを襲わせていた事?)を語り、

 

「怪物達を助ける為に、人間である自分を倒そうと言うのか」と主張した後、

子供達から生き血を少しずつ集めて作ったという別の薬を口にし、その身体をみるみるうちに変え、

「オロチ」となって(同時に雑魚敵も出現して)襲い掛かってきます。

 

 

このラストバトルを制すると、フミ救出となり、

ナギの時と同様、村へと連れて帰る流れになります。

 

(この際、難易度を「ふつう」にしていると、引き返す事なく終了となってしまい、

「むずかしい」にして再度挑戦し直す事になってしまうので、要注意です。私は引っかかった記憶があります。

 

 

フミを連れて村へと帰ると、喜びと祝福の声で溢れ返り、

「今夜は曇っているから変身はしないだろう」として、夜通し宴会が行われる事に。

 

 

その際、宴会の中心から少し離れた場所に佇んでいた村長から、

供養峠の怪物達は皆、生け贄にされた月影村の子供達(おそらくは、生殖や繁殖もした上での)であり、

ヨシゾウタの言いなりとなって彷徨うよりは、いっその事成仏させてあげた方が良いだろうという事で、その場所を「供養峠」と名付けたのだという事をも知らされます。

 

 

夜が明け、村人達から見送られる中、

しばらく姿を見かけなかったケヤキから、最初に貰った贈り物と同じ”やくそう”と、

風来人としての次なる冒険への激励の言葉を受け取り、

 

月影村を後にするシレン

 

 

そして流れる、スタッフロール

 

「月影村」、そして「供養峠」という、

思えばその名前からして、いわゆる”闇”の蔓延りを予感させられていた、

今回の舞台における冒険や出来事も、これにて終了。

 

めでたし、めでたし。

 

 

・・・勿論、そんなハズはありません。

 

一度「完」の文字が出てゲーム終了となるも、

再び電源を付けると、タイトルが↑の画像のように「風来のデレン 月影村の脱出」に変わっており、

冒険を開始すると、再度村を出る場面から始まり、

 

その名を「月影村出口」と言う、

前作の「フェイの最終問題」に相当するクリア後の高難度ダンジョンに挑む事となります。

 

全49Fからなる、このダンジョンをクリアする事で、

タイトルは更に「風来のミレン 月影村の恋人」に変化するようですが、

私は「デレン」のまま終わってしまったので、これ以上の内容は割愛します。

 

 

・・・さて、どうでしょう?

白黒ゲームボーイソフトという媒体で不思議のダンジョン”を過不足なく見事に実現した上で、

非常に限られた容量と文章量の中、それでもプレイヤーを物語面においても引き込むべく、

少ないイベント数にて、先を気にさせる伏線の敷き方と、その回収の仕方が冴えた、

巧みなストーリー構成だったのではないでしょうか。

 

 

当時、兄が買ってきた本作を、

SFC版を(テーブルマウンテンのみ)クリア済みだった私が横取りしてプレイを開始し、先に本編クリアまでしてしまったという経緯があるのですが、

 

拠点となる村にモンスター(コドモ戦車)が現れた時の不吉な感覚と、

夜中の村長の家にて、一同がモンスターの姿となって集まっていた際の恐怖、

そして、黒幕の怪物とは薬売りの男だったというオチの衝撃は、今でも鮮明に覚えており、

「月影村」「ヨシゾウタ」「風来のデレン」等々の単語というかネーミングは、

今に至るまでずっと、脳裏の片隅に焼き付いていました。

 

 

ゲーム性自体も、SFC版と比べてボタン数が減少している事から、操作の面で変更が多い点は多少の慣れが必要なものの、

”不思議のダンション”としての面白さはまったく引けをとっておらず、よくここまでの物をGBソフトで作れたものだなと、子供ながらに思いつつプレイしていました。

 

アイテムやモンスター群の他にも、道中における村や町、ダンジョンを徘徊するNPC等、容量の都合で削られた要素は多いものの、

”合成”を始めとした主要な壺アイテム、ダンジョン内でのお店やモンスターハウス、それと旅仲間といった、押さえるべきところはしっかりと残されていますし、

本作独自の多数のモンスターを始めとして、「ひきあげの巻物」や「ハラヘラズの腕輪」等、多少存在する追加要素も総じてプラスの方向に作用しており、

 

SFC版と遜色ない面白さに加えて、そちらには無い独自的な味わいもある、

手堅くコンパクトに纏められた、お手軽かつ良質な”風来のシレンであったと言えます。

 

 

 

~~おそらく、シリーズの中では地味な立ち位置にあるとは思いますが、

当時プレイした人の心には、概ね良い印象を与えていたであろう本作。

 

シリーズ入門用としても、

はたまた携帯機における”シンプルな作りの不思議のダンジョン”の決定版としても、

今の時代でも、充分に通用するポテンシャルを秘めた良作であると思います。