「がんばれゴエモン もののけ道中 飛び出せ鍋奉行!」ポケモンの亜流と侮るなかれ、高い完成度を誇ったゴエモン達の傑作もののけ使役RPG!
アクションゲーム系統の人気作として知られていた「がんばれゴエモン」シリーズですが、
ジャンルを”RPG”として制作され、非常に高い完成度を誇った作品があった事をご存知でしょうか?
それが、今回ご紹介する、
ゲームボーイカラーにて、1999年12月に発売されていた本作。
私がこのゲームの存在を知ったのは、翌年の春頃。
何かの用事で母と出掛けていた時にブックオフに寄ってもらい、そこで↑の画像の中古取説付きのパッケージを見て、
「ゴエモンの見た事ないゲームがある!」と言って、母にねだって買ってもらったのが出会いとなりました。
価格は、確か3450円だったと思います。
我が家には、SFCの「ゆき姫救出絵巻」やFCの「ゴエモン2」が存在した事から、ゴエモンというキャラクターには幼い頃から馴染みがあったので、
↑のパッケージを見た瞬間、強烈にプレイしたくなったのを覚えています。
半ば衝動買い(?)のような形で親に購入を願ったゲームソフトというのは、後にも先にも、これだけだったような気がしますね。
物語は、ある日「ものしりじいさん」から樹海の調査を命じられ、
そこで一行が、赤鬼の姿をした”もののけ”「シグラ」と出会う所からスタート。
それと同じくして、大江戸城近辺から発掘された”石板”が、
ゴエモン達の留守中に「盗賊妖怪三人衆」と名乗る謎の三人組に奪われてしまい、
シグラによると、その石板に在り処を記された六つの”神眼石”を集めると、富士山が爆発してしまうという事らしい。
こうして、富士山の噴火を食い止めるべく、
日本各地の”遺跡”を巡って神眼石を集める事を目的とした、
ゴエモン達の新たな旅が始まるのでした。
(ものしりじいさんが、万が一に備えて石板の内容を写真に撮っていたため、それを見て盗賊三人衆の後を追う事となります。)
そして、肝心のゲームシステムについてですが、
冒頭で述べた通りRPG形式となっている本作ですが、一番の目玉として、
”封印のひょうたん”と呼ばれるモノを使って、敵の”もののけ”を捕まえるという要素があります。
実行する際には、なるべく敵のHPを削って弱らせてからの方が成功確率が上がったり、
捕まえたもののけは”図鑑”に登録されていく点などは、まんま「ポケットモンスター」のシステムですが、
本作の場合は、ゴエモン・エビス丸・サスケ・ヤエからなるメンバーが各一匹ずつのもののけを使役し、
二人一組の形式で戦っていくという点、もののけはオートで行動するという点で独自性がありますし、
他のもののけと”融合”させる事で、片方の特技を引き継がせるという、「真・女神転生」シリーズのような育成要素もブレンドされています。
(捕まえたもののけは「ほろほろ寺」という場所に送られていきますが、ストックできる上限数は少なめな為、こまめに融合したり逃がしたりして管理する必要があります。)
捕まえたもののけは、自由に名前を付ける事ができる他、
マップの移動中はゴエモン達の後ろを付いて歩くので、愛着や収集意欲も自然と湧くというもの。
歩行グラフィックと、戦闘中の顔グラフィック(通常顔とダメージ時の二種類)が、
全146匹のもののけ全てに用意されているというのは、なかなかに驚異的なのではないでしょうか。
(また、↑の画像の通り、本作は”シンボルエンカウント”形式で、戦うもののけの種類を事前にある程度選別する事も可能です。)
機能面では、メッセージ速度や戦闘スピード、ウィンドウの色等が細かく設定できる他、
フィールドマップは「日本地図」と呼ばれる形式で、ゲーム進行に応じて増えていく行き先を選択して入るタイプとなっています。
この日本地図には、遺跡の内部以外のマップ(町や道中エリア)では、B+セレクトボタンの入力によって即座に戻る事ができる他、
マップ内におけるキャラクターの移動速度自体も速めな為、ゲーム全体のテンポとしては非常に軽快で、RPGにおける煩わしさをほとんど感じる事のない作りとなっています。
戦闘バランスについてですが、
こちらは二人×4組・敵は一匹~三匹という構成の為か、一貫して敵キャラのHPや攻撃力は高めで、一度の戦闘で平均して3~5ターンはかかり、
最初の遺跡である「風の遺跡」時点から、
最後まで一貫して総力戦を求められるバランスとなっています。
戦いに出ているキャラクターが経験値を多めに取得する仕様も含めて、常に同じキャラ(コンビ)だけを使って通常攻撃一辺倒で突破できる作りにはなっておらず、
ゴエモンの高威力単体攻撃技「キセルアタック」や全体攻撃技の「こばんなげ」、同じくサスケの全体攻撃技「サスケばくだん」等は普段からガンガン使い、
HPや技回数が消耗してきたキャラクターは、移動・戦闘中問わずメンバーチェンジを行って控えに回し、レベルアップによる全回復後に再び前線に出す・・・といった感じで、
万遍なく全てのメンバーで、常にフルパワーで戦っていく事が求められるのです。
(逃げるコマンドの成功確率も体感二~三割程度なので、逃げる連発プレイも通用しません。)
ですが、そこを苦痛と思わせず、むしろプレイヤーの闘志とテンションを掻き立てるのが、
ハイクオリティかつ、多彩な戦闘曲の数々。
雑魚戦のものだけで5曲存在し、フロア毎に細かく切り替わってプレイヤーを飽きさせず、
ゲームへの熱量を維持させてくれます。
私は本作プレイ前までに、
SFCの「2」、「3」、「きらきら道中」、64の「ネオ桃山幕府」等を友人宅で遊んだり貸してもらったりしてプレイ済みであったので、その大半に聞き覚えがあった為、
それらのGBC音源アレンジによる、怒涛のコナミサウンド(?)だけでも、本作を買ってもらった事に大いに価値を感じていたものです。
(また、戦闘以外のシーンにおいても、過去作の曲がふんだんに使われています。)
上記の歯ごたえあるバランス調整となっている関係上、
もののけの”特技引継ぎシステム”の重要性が高くなっており、特技のカスタマイズにも自ずと力が入ります。
もののけの特技は、大きく分けて紹介すると、
・単体攻撃技(三段階あり、威力が増すごとに必要枠も多くなる)
・全体攻撃技(上記と同様)
・該当するパートナーのHPを消費して全体攻撃を放つ「がったい」(使用時には凝った一枚絵も表示されます)
・物理攻撃を受けた際に一定確率で反撃を行う「カウンター」
・パートナーのレベルアップ時に該当ステータスを1多くアップさせる「〇〇のもと」系
・パートナーの該当ステータスを常時アップさせる「〇〇ふよ」系・「〇〇アップ」系
・パートナー又は自分への該当属性の攻撃技を軽減、又は無効にする「〇〇のまもり」「〇〇のしゅご」「〇〇のけっかい」系
・・・等々、上記に分類しないものや、極少数存在する固有のものも含めると非常に多岐に渡り、
幅広いカスタマイズを行う事ができます。
(とは言え、基本的に戦闘バランスが苛烈な事から、ゲーム進行をスムーズにするなら
序盤から一貫して「ちからふよ」(効果の高い「ちからアップ」を取得できるようになったらそちらに替える)、
進行状況に合わせた威力の全体攻撃技、一枠かつ高性能な「カウンター」辺りは必須となりますが。)
戦闘面以外で印象に残る点としては、
本作におけるヤエちゃんは、初期メンバー三人よりも少し遅れて登場する事。
風の遺跡を突破し、青森に到着した所で加入してくれ、本格的な長旅の清涼剤・・・もとい回復役(プレイヤーにとっては気分的なエンジンにも)になってくれます。
(ステータス的には、もののけの封印確率が上がる”ほうりき”のステータスが高い為、戦闘面では自身が戦うよりも、もののけを封印する役割を多く担う事になるでしょう。)
また、北海道地方の遺跡である「地の遺跡」クリア後には、
客寄せの為に景品にされてしまった神眼石を求めて挑む事になる、
本作唯一のミニゲームである、ボタン連打勝負の”犬ぞりレース”もまた同様に印象に残ります。
北海道地方をクリアして、大砲で大阪地方に飛んでからは、一行の戦いは更に激化。
ダンジョンの構造や仕掛けにも一工夫が為されるようになってきて、探索の手応えも増していきます。
↑の画像は、水流による一方通行の道が幾重にも入り組んだ「水の遺跡」、
ボタンの切り替えによって、一部通路の行き先が切り替わるギミックが施された「火の遺跡」のもの。
一見ややっこしそうに見えるものの、あくまで”簡単過ぎず複雑過ぎず”の範囲内なので、テンポを損ねるほどにはなっておらず、
戦闘と育成がメインのゲームバランスである点は、最後まで一貫されています。
種子島の海底洞窟を抜けた先の、五つ目の遺跡である「木の遺跡」のボスを倒し、
盗賊妖怪三人衆のリーダー「タケル」との一騎打ちも制すると、
それまでゴエモン達に追従していたシグラが、
集めた五つの神眼石を持ち去ってしまうという一大事が発生。
主人公達を頼って何かを集めさせた人物が黒幕、もしくはそれに通じている・・・というのは、
ゲームにおいて古今東西よくあるパターンですね。
最後の遺跡である「力の遺跡」も踏破して、全ての神眼石が集まった果てに明かされた真実とは、
神眼石は、樹海の石像に封印されていたシグラの兄貴分、
魔界の大魔王「シグマ」を封印から解く鍵であったという事。
その肩書きに反して、温厚そうに見えたのも束の間、
「富士山の火山エネルギーを利用して鍋をやる」と言い出した二人を止める為・・・
富士山頂にて、
大江戸の平和を懸けたラストバトル!!!
この戦いを制すると、一撃で葬れるシグラとのネタ戦闘を経た後、
二匹を封印して「ほろほろ寺」に送った矢先、早々に逃げ出してしまって大変な事になると思われたものの、
団子屋で無銭飲食をしていただけだった・・・という結末をもって締め括られ、スタッフロールとなります。
しかし、ゲームはこれだけでは終わらず、
大阪地方にある「四神の塔」と呼ばれる朽ち果てた建物に、お金を一定額寄付しつつ、そこに出現する四神を全て倒して修理を終えている場合、
クリア後に同じ場所から「天上界」と呼ばれる場所に行く事ができ、
そこでは作中のボスキャラ達(+盗賊妖怪三人衆)と再戦する事ができます。
”ほうりき”のステータスさえ足りていれば、勿論封印する事も可能な為、
クリア後のおまけ&やり込み要素としては申し分ありません。
そして、天上界の最上階には、
四神の塔の修理をゴエモン達に申し出ていた人物「なぞのじい」がおり、
「おぬし達のお蔭でここに帰って来れた」と言って、感謝の気持ちを伝えるべく、
「せっぷん丸」という名の”もののけ”となって襲い掛かって来るという、
衝撃のラスト(最終決戦)が・・・ ・・・!!!
そ、その展開は予想してなかったぜ・・・ ・・・ッッ!!!!
(いや、本来はこれが、大半のゴエモンシリーズの基本的なノリというか、らしさなんですけどね。)
・・・と、そんな感じで、
「がんばれゴエモン もののけ道中 飛び出せ鍋奉行!」について、ご紹介させて頂きました。
実は、筆者の場合、
この作品を遊ぶ以前に、同じくゲームボーイカラーのゴエモンのRPGである「天狗党の逆襲」という作品もプレイしておりまして、
そちらは異様なほどにシンプルかつ、短時間で終わってしまう内容となっていて、少々肩透かしだった経験があったんですよ。
ですが、冒頭で述べた通り、
やはりゴエモン自体は当時大好きなキャラクターであった事には変わりなかった事と、シリーズへの信頼感は失われていなかった事もあって、
ブックオフで本作を見かけた時に、「こっちは絶対に面白いハズだ!!」という確信めいた気持ちが湧き上がったんですよね。
そして、母に買ってもらってプレイしたところ、こちらはいつものゴエモンクオリティ・・・、
それどころか、割と本気で隠れた神ゲーのレベルに達していたと思っています。
後になって、ネットで色々と調べて知った事なのですが、
ゴエモンシリーズは中期頃からクオリティに割とバラつきがあり、
この「飛び出せ鍋奉行」は、シリーズ後期の中では結構奇跡的にクオリティの高い作品だった、というのが実情のようです。
恐らく、シリーズにおいて最も知名度が高くて人気なのが、
スーファミの「1」~「3」(次点で「きらきら道中」)、
そして、64の「ネオ桃山幕府」(また、私は未プレイな「でろでろ道中」、本作の雑魚戦BGMで私が唯一聞き覚えがなかったBGMが収録されているみたいです)である事を考えると、
本作はそれらよりも後に制作・発売された作品であるので、その出来に反して知名度が低そうであるというのは、非常に勿体ない事だと思います。
戦闘曲の数々を筆頭に、過去作のBGMが良アレンジして採用されている事や、
恒例の「ゴエモンインパクト」も、「けいたいでんわ」というアイテムを戦闘中に使う事で、条件付きの高威力全体攻撃を放ってくれるという形で無理矢理ねじ込まれている事などから、
シリーズファンの為の作品として申し分ない作品である事は言わずもがなですが、
一本のRPGとして見ても、バランス調整等も含めて妥協なく作り込まれている事から、
(ゴエモンを知らずとも)完成度が高くて手軽なRPGを求めている方なら、手を出す価値があった作品であると思っています。
(図鑑コンプを目指す場合、「きんだんのひほう」というアイテムを使う事で入力できる”パスワード”でしか得られないもののけが20体、
「〇〇のごふ」系のアイテムを持った状態で、特定のもののけ同士を融合させる事でしか誕生させられないもののけが10体もいて、
私にとっては当時手付かずだった要素ですが、この手のゲームには付き物な要素だったので一応は入れたのだと解釈すれば、特にマイナス要素ではありませんし、
近年にゲーム互換機の”レトロフリーク”でプレイし直して、当時から実に20年以上の時を経て全もののけコンプリートも達成しました。)
この記事をきっかけに、今からでも本作の存在を知って頂く方が増えてくだされば、
私にとっては、これ以上ありません。
~~以下、メインキャラクター四人の性能雑感をもって、本記事の締め括りとさせて頂きます。
■ゴエモン
全体的にステータスが高めで、特技が三つとも攻撃に関するものである事と、三連続攻撃できる専用武器「ヌンチャク」で長い期間を戦い抜ける事から、「ちからアップ」を習得したもののけを引き連れてのワンマンプレイもある程度は可能で、終始主人公らしい活躍を見せる。
運のステータスだけは低めだが、ほとんど気にならないかと。
■エビス丸
体力が高くて打たれ強く、ボス戦で最初に出して「だつりょくのまい」を重ねがけして弱体化させるという重要な役割はあるものの、このゲームの大半を占める雑魚戦では活躍させづらく、序盤に「風の遺跡」にて”外の強風でも飛ばされない”という見せ場を早々に与えられた後は、比較的に影が薄くなりがち。
しかし、終盤に買えるようになる、二回攻撃が可能かつ25%の確率で物理攻撃を無効にするという専用武器「むさしのけん」の超性能のお蔭で、最後の最後に花開く大器晩成キャラ。
■サスケ
序盤から高威力全体攻撃技「サスケばくだん」を習得する事に加えて、ヤエ加入後に買える専用武器「さくれつだん」によって、ある程度の期間は通常攻撃でも全体攻撃が可能。
それでいて、終盤には怒涛の七回攻撃の専用武器「しちしとう」も買えるようになる等、攻撃面においてはゴエモン以上に暴れ回るキャラ。意識しないと雑魚戦は彼が引っ張りだこになりかねない。(ある地域では、彼のみ”ダメージ床を無効化する効果”まであるので余計に。)
唯一の欠点は、HPが低めな事くらい。
■ヤエ
作中唯一のミニゲームである「犬ぞりレース」で華々しく活躍する他、移動中に使用できる唯一の技「いやしのじゅつ」の使用者である為、マップ移動中に「わざ」を選択すると、わざわざ”ヤエちゃんのかいふく”と表示される。また、人魚の術によって唯一”水中を移動できる”・・・等、システム面でかなり目立つように優遇されているキャラ。もとい、ヒロインキャラ。
ステータス面では、ほうりきが高い以外は控えめなので、バトル方面で活躍させるのは難しいかと思いきや、最序盤で封印できて「ちからのもと」を持っている「ひとだま」が彼女との専用合体技も持っている為、連れ歩けば必然的にちからも上がっていってアタッカーもこなせるようになるという、至れり尽くせりな配慮がなされている。