「風来のシレン」屈指の完成度を誇る和風製不思議のダンジョン!黄金郷を求め、テーブルマウンテン踏破を目指す!
「1000回遊べる」というキャッチフレーズで売り出され、
一部で愛好家が多いとされる、”不思議のダンジョン”シリーズ。
今回は、そのシリーズ初期作でありながら、非常に高い完成度を誇り、
今もなお、根強い人気を誇っているであろう作品。
発売は1995年で、本作の正式なタイトルは、
これは、同じくSFC作品の「トルネコの大冒険」の続編という事で、
風来のシレンシリーズとしては一作目ですが、不思議のダンジョンシリーズとしては二作目にあたる事を意味しています。
ドラクエのキャラクターである”トルネコ”が主役として起用された前作と異なり、
今作にて”シレン”というキャラクターが新たに用意されましたが、
すぎやまこういち氏が手掛けるクオリティの高いBGM群も手伝って、その和風テイストな世界観が人気を博し、それぞれ独立したシリーズとして続編が作られていく事となりました。
物語は、主人公である風来人シレンが、
「渓谷の宿場」と呼ばれる村に到着したところからスタート。
彼は、伝説の神鳥”黄金のコンドル”が棲むとされる「黄金郷」を目指して旅を続けており、
全30フロア(+いくつかの休憩地点)から成り立つ”こばみ谷”を冒険し、
後半の舞台となる前人未踏の山「テーブルマウンテン」を突破して、黄金郷へと辿り着く事がこのゲームの目的となります。
拠点となる渓谷の宿場には、地変学者”フェイ”が作った、
ゲームのセオリーを学びつつ、様々なアイテムを貰える施設があり、そこで本作における基礎的な知識や立ち回り方を身に付けていく事ができます。
(実際の冒険で力尽きると、渓谷の宿場に戻され、その度に一回ずつ挑戦する事ができる全50問の内容となっています。
それによって、何度も死んではプレイヤー自身の腕前を磨いていくゲーム構成ですが、最初の一回目で本編クリアに辿り着く事も可能です。)
宿場を出発すると、冒険の最初の舞台となるのは、「杉並の旧街道」と呼ばれる場所。
ドラクエで言う「スライム」のポジションにあたる雑魚敵「マムル」を始めとして、通常の攻撃しかしない三種類の敵だけが登場する、序盤も序盤といった簡単なマップですが、
ここで流れるBGMは非常に印象的で、本作を代表する名曲の一つと言って差し支えありません。
(本作のBGMの多くは、ここでのBGMのフレーズがアレンジして使用されています。)
旧街道を抜けると、次のフロアは「山間渓流」。
この時点から既に、矢による遠距離攻撃を行う「ボウヤー」、
毒草を投げてシレンの力や移動速度を下げてくる「おばけ大根」、
攻撃力の高い「ハブーン」等の強敵が登場し、
本当にこのゲームを始めたばかりの子供時代は、ここを抜ける事さえも困難に感じていたものです。
渓流を抜けると、最初の休憩地点となる「竹林の村」へ。
アイテムを買える”お店”や、ギタン(お金)を払って武器を強化できる”かじ屋”等が利用できます。
また、↑の画像でゾウリ頭と呼ばれている人物は、イベントをこなして条件を満たすと共に戦ってくれるようになる旅仲間の一人「ペケジ」で、
最初は役立たずながら、何度も仲間にするうちに段々と強くなっていく事から、特に印象の深いキャラクターとして記憶に残っている方も多い事でしょう。
(本記事では詳しい説明は割愛しますが、残る旅仲間の「お竜」「座頭ケチ」もそれぞれ個性が立っていて存在感があり、この三人の存在も、本作の魅力の何割かを占めています。)
竹林の村を出発し、次に向かうのは「天馬峠」。
ここから登場する「鬼面武者」を倒すと、4ターン後に「ぼうれい武者」というモンスターとなって復活します。
そのまま放置すると、他のモンスターに乗り移ってレベルアップし、一転して脅威となるパターンが多い為、注意が必要です。
(ただし、それを利用して経験値を一気に稼ぐというテクニックもあります。)
峠を越え、森林を抜けると、二か所目の休憩地点である「山頂の町」に到着。
ここには、ガンコな壺職人「ガイバラ」による連続イベントが存在し、
イベントを完遂すると、武器や盾を合体させる”合成の壺”という強力なアイテムを使用できるようになります。
(また、山頂の崖の上に構える料亭”がけっぷち”の繁盛物語も展開され、そちらも印象に残ります。)
山頂の町を通過すると、「ネブリ山廃坑」「断崖の岩屋」「山霊の洞窟」と呼ばれる洞窟地帯へと突入していきます。
壁の中を移動する「パコレプキン」、この時点では脅威的な攻撃力を持つ「火炎入道」、装備を呪い状態にしてくる「ノロージョ」等、次々と強力なモンスターが登場してくる上に、
一定確率で、多くのモンスターが待ち受ける”モンスターハウス”が出現するようになるので、より危険度が増していきます。
また、遠距離から大砲を撃って固定ダメージを与えてくる「オヤジ戦車」は、
旅仲間が倒されてしまう危険性の高さと、その見た目とネーミングから、本作の中でも一段と特徴的なモンスターでしょう。
(最初は低速ですが、レベルアップして「ガンコ戦車」「イッテツ戦車」になるにつれて行動速度が上がり、更に脅威となります。)
上記の洞窟エリアを突破すると、「奇岩谷」と呼ばれる場所へ。
岩に張り付くようにして住居を構えた人々が住んでおり、
ある条件を満たすと”倉庫”が利用可能になる以外には、”宿屋”が使用できるのみという秘境的な場所で、これまでとは一線を画した雰囲気を醸し出しており、
「ここからが本番・・・!」という気分にさせてくれます。
気分的には、既に終盤という感じになっているのですが、ここでまだ折り返し地点なんですよね。
奇岩谷にて、ひとときの休息を取った後、向かうは「瀑布湿原」。
剣や盾をサビつかせて弱体化してくる「ゲドロ」、力の最大値を下げてくる「吸引幼虫」、レベルダウンのダンスを踊る「くねくねハニー」と、
イヤなモンスターばかりが揃った極悪な地帯なので、長居は禁物です。
湿原を抜けると、ついに「テーブルマウンテン」に到達!!
これまでのマップには、多数のNPC(様々な恩恵をもたらしてくれるキャラクターや、シレン以外の風来人達、お店を開いている店主など)が徘徊していましたが、ここから先は一切登場しなくなり、
ゲームながら、「前人未踏の地に挑んでいる」という感覚をビリビリと味わえる設計になっています。
四本の腕で殴りかかってくる「マスターチキン」、一定確率で痛恨の一撃をお見舞いしてくる「ミノタウロス」、透明な見た目で突然攻撃してくる「何者か(エーテルデビル)」らが迎え撃ってくる、テーブルマウンテン内部。
静寂かつ緊張感あるBGMに切り替わると共に、上記のヤバいモンスター達が襲いかかってくる、
この17F突入時の雰囲気は、私の中では至高のものです。
特に、マスターチキンが攻撃してくる時の「ギンギンギン!!」という効果音と、
半端なダメージを与えてしまうと「チキン」にレベルダウンして逃げて行く様子に、真剣な命のやり取りを感じて非常に滾ります。
また、21Fからは、催眠術を使ってシレンにデタラメな行動をさせる「スーパーゲイズ」も出現するので、これに泣かされたプレイヤーも多いでしょう。
そんな危険極まりないテーブルマウンテンですが、隠れ里である「地下水脈の村」が存在します。
ここのお店には、”モンスターの肉”を始めとして、比較的強力なアイテムが置かれている事が多かった気がするので、
最終段階に向かう前の、最後の補給地点となっています。
(進んだ先で落とし穴の罠にかかると戻ってこれるので、意図的にそれを繰り返すテクニックも存在するようです。)
地下水脈の村を出て、22~25Fを突破すると、「ムゲン幽谷」と呼ばれる場所に。
屋外エリアなので、超強力な浮遊モンスター「死神」が四方八方から襲ってくる上に、杖を振って危険な効果ばかりを見舞ってくる「ガイコツまおう」もいる、
おそらく最難関のマップで、即降りできないと命を落とす危険性が非常に高いです。
ここを抜けた先に待つ、27~29Fはそれぞれ「幻魔の試練」「竜哭の試練」「最後の試練」と呼ばれ、
こばみ谷最強の雑魚敵「ドラゴン」等が登場する、激闘必至のエリアなので、同じく即降り推奨です。
三つの試練を越えると、遂に目的の地であった「黄金都市アムテカ」に到着。
ここには、任意で調べられる石碑がいくつか建てられており、
この地の歴史、主に「魔蝕虫」というモンスターによって滅亡し、黄金のコンドルも封印されてしまった旨が記述されていて、
最後には、シレンの相棒である語りイタチのコッパが「大昔のモンスターだから、さすがにもう生きてはいないだろう」と締め括ったところで、最終局面へと向かう事となります。
虹の根もとを通過した先の「滝壺の洞窟」にてシレンを待っていたのは、
先ほどの石碑に存在が示唆されていたモンスター、「魔蝕虫」。
そう、ヤツは何百年もの歳月の間、生き続けていたのである。
黄金都市を滅ぼし、黄金のコンドルを封印した魔蝕虫との、最後のバトルを繰り広げる事になります。
まともに戦うと、さすがにかなり強いので、
一定時間同じ部屋のモンスターを眠らせる”バクスイの巻物”などを使って、一気にケリをつけるのが良いでしょう。
(裏技として、”白紙の巻物”を使って一瞬で倒す方法もあります。)
魔蝕虫を倒して先へと進むと、
ヤツの糸によって包まれた、光り輝く物体を発見。
それに向かって、一太刀を入れるシレン。
すると・・・
長い封印から解き放たれ、
黄金のコンドルがここにお目見え!!
飛び立つ黄金のコンドルを見るやいなや、
次々と願い事を口にする人々を映したエンディングが印象的です。
特に、かじ屋の娘さんの、
「私の大切なすべての人達が、よく笑い、よく涙ぐみ、
・・・もしかしたら恋をして、生き生きと、生きてゆけますように・・・」
という素朴な願い事は、強くプレイヤーの心に響きます。
その後、人里離れた場所でコンドルと別れた後、
徒歩で帰路に就くシレンを背景にスタッフロールが流れ、最後は”完”の文字が出て終了となります。
この、通常では一度しか見られないエンディングなのですが、
旅仲間を連れてクリアした場合、そのキャラも一緒に各画面に映ってのエンディングとなり、
四人全員でのクリアを達成した「真のエンディング」と題した動画がYoutubeで見る事ができるので、初めて見た際(知った際)には目頭が熱くなったものです。
ちなみに、クリア後には、特定の条件を満たす事で「掛軸裏の洞窟」「食神のほこら」「フェイの最終問題」という特殊なダンジョンが出現し、
その三つのクリア後ダンジョン、とりわけフェイの最終問題こそが本作の醍醐味とされているようなのですが、
私は本編だけで満足してしまって、それらについてはあまりプレイした記憶がありません。
個人的に本作の魅力は、その和風な世界観のもと冒険を進めていく本編の雰囲気作りにあると思っているので、
本記事では”こばみ谷”攻略のみに沿って、その雰囲気をお伝えしていく事を目的として紹介するに至りました。
それと、こうして記事にする上で思ったのは、
不思議のダンジョンという独特なゲームジャンルの都合上、このゲームの面白さを文章で伝えるのって難しいなぁ、という事ですね。
何が面白いのかを述べようとすると、
・自分が動けば相手も動く、一手が生死を分けるゲーム性
・床落ちしている剣や盾などで、性能の良い物を拾った時の高揚感
・有用なアイテムを取捨選択して蓄えて、終盤を生き延びる上での緊張感
等々、どうしてもありきたりな書き方をするしかなくなるというか。
それらのゲーム的な面白さは勿論の事ですが、
やはり私としては、本作の魅力はその独自の雰囲気によるところが大きいと感じます。
それから最後に、ちょっとした思い出話をさせて頂きますと、
本作には、いち早く「フェイの最終問題」をクリアして、そのセーブデータ画面を写真に撮って送る事で”マムルのぬいぐるみ”がもらえるというキャンペーンが開催されていて、
兄がそれを達成した事により、当時我が家にあったんですよ、そのぬいぐるみが。
それを私が借りて一緒に寝たりして、可愛がり過ぎた結果、
全体的に薄汚れていって、耳の後ろの毛が抜けて綿が見えたりするようになってしまったので、最終的には母に捨てられてしまいましたね。
そんな出来事も含めて、本作は私の中で非常に印象に残っているスーファミソフトの一つに間違いなく、
高校の頃には、一から再プレイもして遊んでいました。
(その際も、クリア後ダンジョンはあまりプレイしませんでしたが。)
~~日本人の心に響く、和風な世界観とキャラクター、そして良質なBGMによって彩られた、
不思議のダンジョンシリーズの初期作にして、高い完成度を誇る本作。
今の時代でも通用する、色褪せない面白さを持った一品です。