「マリオテニスGB」任天堂本気の心躍るサウンドと共に、毎日テニス三昧。アイランドオープン出場を目指せ!
小学生の頃って、毎日のように自分の好きな事で遊んで、
そんな日々がずっと続いていくような感覚がありましたよね。
私の中で、そんな子供時代の世界観と空気感を、
そのままゲームに落とし込んだかのような作品があります。
それが、”ゲームボーイカラー”で発売された「マリオテニスGB」です。
発売は2000年末。
私がこの作品にハマっていたのは、小学六年生の頃。
新たに同じクラスになり、「パワプロ」を通して仲良くなったN君の家によく遊びに行くようになっており、彼に貸してもらった事がきっかけでした。
「パワプロ」と同じく球技である事、ストーリーに沿って選手を育成していく点が似通っている事から、こちらにも夢中になったのだと思います。
テニスの才能を見込まれた主人公(デフォルト名は「アレックス」)がやって来たのは、
テニス界の名門学校「ロイヤルテニスアカデミー」を構える、テニスだけに打ち込める島。
主人公はここで、ひたすらテニスの腕前を磨き、ランキング戦を勝ち上がって代表選手となり、
南の島にて毎年開催される「アイランドオープン」と呼ばれる大会で名を馳せる事を夢見て、
テニス漬けの毎日を過ごす事になります。
この世界観、たまらないよね。
毎日毎日、自分の好きな事だけやっていれば良いっていう。
子供の頃は、何気なく夢中になってプレイしていたゲームですが、
今となってはなんだか儚く、とてもまぶしい空間のように感じられます。
ストーリーは、一人で上を目指す「シングルス」と、
パートナーと共闘していく「ダブルス」があります。
ダブルスにて相棒役を務めるのが、
”あご髭をたくわえた、トレーナー気質で筋肉自慢のおにいさん”というのも、
子供ながらに楽しい世界観でした。
彼は、最初からある程度パワーが高くて頼れるので、
序盤のうちはダブルスで進めるのが効率的です。
なにより、”二対二”の形式の方が面白いです。
これら二つのモードは、時間の進み方自体が異なる設定のようで、どちらかで物語を終盤まで進めて、選手達が「アイランドオープン」出場の為に島を発っていても、
もう一方では普通にいる・・・なんて状況になったりもします。
また、自分達だけはランキング戦や大会で負けても何のペナルティもなく、
ストーリーを進行させる為に何度でも再戦が可能で、”ゲームオーバー”という概念はありません。
でも、そんな多少のツッコミ所はうやむやにしてしまえるほど、
このゲームには夢のような没入感と、熱さを味わえたのです。
主人公達が最初に在籍するのは「ジュニアクラス」。
ここからライバル達と次々に勝負をし、ランキング戦を駆け上がって高みを目指していく事になります。
その内容から、このゲームに費やす大半の時間はテニス対決となるわけで、
各段階ごとに異なる対戦BGMを堪能していくのが、主な要素でもあるのです。
当時から、携帯型ゲーム機はイヤホンを付けてプレイする事にハマっていた私は、
当然、本作もそのようにプレイし、ハイクオリティな試合曲達に心を躍らせながら浸ったものです。
「ジュニアクラス」戦の試合曲を一言で表すと・・・”ひよっこ”。
まだまだ未熟、基本を大切に。
遥か高みには、気が遠くなるほどの道のりがある。
でもその心には、確かな闘志が宿っている・・・
そんな感じの音楽です。
そこかしこのフレーズから漂う”ひよっこ感”が見事ながら、
この段階から既に熱さを感じさせる、絶妙な構成が見事です。
試合後には、成績に応じて取得した経験点を主人公とパートナーとで振り分け、
レベルアップしていく事ができます。
最初の頃の主人公は、↑の画像のようにスピード以外の能力が最低値で、
このままランキング戦に挑むには、ちと苦戦が強いられ、時間もかかります。
(ステータスは装備品の”ラケット”と”シューズ”でも上下させられますが、入手にはシングルスでストーリーを進行させる必要があり、それほど有用ではなかった記憶があります。
途中で手に入る、経験点を1.5倍にする「”鉄”セット」だけは別ですが。)
そこで、「トレーニングセンター」に用意されている”テニスマシンルーム”と”カベうちテニスルーム”にて、独自に訓練を積むという手段があります。
どちらもレベル4までの目標点が用意されており、その気になれば最初の段階からオールクリアが可能で、こなせば大量の経験点を得て、大幅にレベルアップする事ができます。
そうしておけば、ランキング戦を制覇するのにかかる時間も短くなり、
サクサクとテンポ良くストーリーを進めていく事が可能となります。
ジュニアクラスでチャンプとなった主人公達が次に向かうのは、
同じく中級者達が集まって切磋琢磨する「シニアクラス」。
「シニアクラス戦」の試合曲を一言で表すならば、”途中の段階”。
初心者からは一皮むけ、中級者の仲間入りとなった主人公(と相棒)。
しかし、それによって見える景色も変わり、その道の茨が以前よりもハッキリとし、
周囲には、自分よりも経験の長い実力者達がズラリ・・・
だが、負けないぞ!
上に行くのはおれ(達)だ!!
そんな感じの音楽です。
ここでの頑張りが今後の道を分けるのだ、と言ったような、
ジュニアクラス戦よりも一段と闘志に満ちたフレーズと、”中級者感”溢れた曲調の中、
曲の終わり頃には、”猛者達に揉まれ、まだまだ足元が不安定”という印象も受ける、
複雑な心境を表した一曲に仕上がっています。
シングルスで出てくる紫色のおばさんが強かったので、
「おばさんつええ!」と言いながらプレイしていたのを覚えています。
シニアクラスも制すると、次はいよいよ、
「アイランドオープン」への出場権を懸けた「選抜クラス」での戦い。
ここでの試合は、シングルスとダブルスどちらも一度しか行われず、
一回ずつしか試合曲を聞く事ができません。
そんな「選抜クラス」での試合曲の雰囲気は・・・まさに”挑戦を懸けた戦い”。
狭き門を通った実力者だけが許される、強豪がひしめく密な空間での戦い。
おれ(達)は、充分に強い。既に一握りのトッププレイヤーだ。
だが、この戦いに勝てば、更に未知なる世界が待っている・・・!!
そんな感じの音楽です。
ジュニア・シニアクラス戦の試合曲も良曲でしたが、
ここに来て更に音楽のクオリティが跳ね上がり、鳥肌立ちまくりです。
イヤホンプレイで没入感を存分に味わっていた当時の私は、
この辺から、主人公と共に”頂点を目指す者”を一緒に体感できるようになり、
あまりの熱中さに、なんだかフワフワとした感覚になった事を覚えています。
晴れて勝利し、”アカデミー代表”の座を勝ち取ると、ガッツポーズする一枚絵が表示され、
「TO BE CONTINUED」の文字と共に、一度タイトル画面へと戻ります。
ゲームは、ここからが本番・・・!
といった気分にさせられますね。
ゲームを再開すると、レギュラー全員で学長室に集まり、
明日にでも「アイランドオープン」開催地へと向かうとの事。
(べつに、主人公の都合で出発日・・・もとい開催日時も延期できるんだけどね。)
次の日の朝、飛行機に乗って南の島へ。
ここで初めて映し出される、広々とした青い海。
そして念願の、テニスの祭典「アイランドオープン」開催用の島。
到着すると花火が上がり、一同を迎え入れます。
本当に、最高の世界観ですねぇ。
夢と希望でいっぱいだ。
会場内には、トーナメント表が掲示されている他、
出場選手用の控え室があり、円形のマークの上に乗る事で、試合が開始されます。
雰囲気作りに、一切の抜かりはありません。
「ここからが勝負だ!」という気分を湧き立てます。
(この先は、固有のグラフィックを持つ強敵達との戦いが待っているので、
パートナーのレベルも存分に上げておく必要のあるダブルスの方が、難易度は高いと思います。
ダブルスを後に残した方が楽しいのもあって、私は先にシングルでプレイしていました。)
そして迎える、「アイランドオープン」一回戦。
さぁ、来ました。神曲です。
テニスの名門「アカデミー校」でのランキング戦を一気に駆け上がり、
南の島へとやって来た主人公(達)。
新天地にて試合を繰り広げる、その胸には無限大の夢と希望が詰まっている。
おれ(達)は一体、どこまでやれるのか!?
楽しさとワクワク感を存分にその身に感じながら、
所属校代表の名を冠して、初戦に全力で挑む・・・!!
といった感じの音楽です。
この「アイランドオープン」での試合曲は、全て”64版マリオテニス”のトーナメントモードにおける、それぞれの段階のゲームボーイカラー音源アレンジ版なんですけど、
イヤホンで聞いていた事もあってか、こちらの方がクオリティが高いような気がしてしまいます。
少なくとも、初戦における新天地での”ワクワク感”に関しては、
64版よりも圧倒的に上。
最高です。
これほどまでに開放感のあるワクワク感、そして挑戦を感じさせるゲーム音楽は、
私のゲーム史上を振り返っても、他にありません。
(ぶっちゃけ、ここと準決勝の曲について語りたいがために、この記事を書いたようなものです。)
初戦(シングルスでは二回戦も)を勝ち抜くと、続くは準決勝。
この時の試合曲も凄い。
それは一言で表すならば、”異次元の戦い”。
今までの戦いは、あくまで修行に過ぎなかった。
上には上の、とんでもない奴らがいたのだ。
全てを出し切らなければ、この戦いには勝てない。
負けるか!!絶対に勝つ・・・!!
といった感じの音楽です。
一回戦とはまた別の方向性で、こちらの音楽も神曲です。
なんというか、凄い。ほんとに凄い。(語彙力)
これを知らない人に、「”宇宙空間で行われる、地球を守るための戦い”のシーンで流れる音楽だよ」って言って聞かせても、通用するんじゃないでしょうか。
意味不明な事を言ってるみたいですが、初見では本当にそんな感じの印象を抱きました。
クオリティも完全に上限突破してます。
間違いなく、このゲームの山場であり、最も鳥肌が立ちまくる試合でしょう。
”ゲームボーイカラー”の音楽で、ここまで鳥肌立つ事ってあるのかってくらい。
更に、シングルスでは初期から親交のあった、「アカデミー校」で一、二の実力を誇る先輩「エミリー」と激突する事になるという、ストーリー上においても意外にも盛り上がりを見せる一方、
ダブルスで戦う事になるコンビの女性側「スパイク」選手は、球がえげつない変化を見せる天下一品のドロップショットを有する強敵で、この試合曲に関してはそちらの方が映えると思います。
(未知なる凄い強敵と戦っている、という事で、より”異次元感”が増します。)
いやぁ~、良いね。
書いてて、またやりたくなってくるよ。
山場である準決勝に勝利すると、いよいよ次は決勝。
ここでの試合曲を一言で表すなら、”頂上決戦”。
瞬く間に、ここまでやって来た。
目指すは優勝、頂点(てっぺん)だ・・・!
といった感じの音楽です。
ですが、うん。
初戦と準決勝の音楽が凄すぎて、そちらの盛り上がりと比べると、
この決勝戦はちょっとだけ劣るかもしれませんね。
64版と比べて、テンポを速め過ぎているのがイマイチなのかな?
準決勝の曲はそれが上手い事ハマっていたのですが、決勝戦の曲はもう若干ゆったりめの方が、
”王者を決める戦い”感が増して良かったかも。
その点に関してだけは、ちょっと惜しい所ですね。
それはともかく、「アイランドオープン」での激闘を制して優勝すると、
晴れて”最強のテニスプレイヤー”に輝き、黄金のトロフィーを貰って、ゲームは終了。
シンプルなゲーム性ながら、試合中に流れる渾身の音楽の数々によって終始気分を盛り立て、
最後まで突っ走らせる熱中性を持たせた、”任天堂屈指の名作テニスゲーム”なのでした。
めでたし めでたし。
・・・ではない。
スタッフロールが流れ終わると、再び「TO BE CONTINUED」の文字が表示された後、
今までまったくその気配を見せなかった”伝説のプレイヤー「マリオ」”の存在が知らされ、
彼から招待の通知が来ているとの事。
会ってみたいと返事をすると、外に迎えが来ていると言われ、
物語は真の最終段階へと突入します。
向かう先は、今度は北の空の・・・虹。
(ここでまた一度、タイトル画面へと戻ります。)
その名を「マリオワールド」と呼ぶ、マリオ達がテニスを嗜む夢の国へと到着。
最後の最後になって、マリオファミリーが一同に会するこの場面は、なかなかに圧巻。
そういえば、これってマリオのゲームだったね!と、強烈に思い起こされます。
最初は歓迎会ムードだったのですが、ワリオとワルイージ、そしてクッパ達が「チャンピオンとマリオが対決するところを見に来たんだ」と言いだし、なんやかんやでそういう流れに。
奥にある虹のゲートをくぐり、迎えた特設コートにて行われる、
マリオ(ダブルスではピーチも)との、正真正銘の最終決戦。
これが強い。
今までの敵とは、また更に一段上を行く強さで、場合によってはここで更なるレベルアップを必要とされます。(ダブルスでは特に。)
この、「最後の戦い」を飾る試合曲を一言で表すと、文字通り”雲の上の戦い”。
地上で最強になっても、雲の上ではあのマリオ達が同じように、テニスを嗜んでいた。
何をやらせても器用にこなすマリオ、さすがに強い!
胸を借りるような心境だけど、こっちも本気で勝ちにいくぞ・・・!
といった感じの音楽ですね。
最後に相応しい曲調でありながらも、全体的にどこか優雅で、
”極上の余興”というような雰囲気もあります。
また、最終決戦と言いながらも、撃破後には更に難易度を指定しつつ、何度でも再戦できる事から、
物語本編の最終局面というよりかは「クリア後のおまけ」のような側面も兼ねているのかもしれません。
マリオ(とピーチ)との最後の対決に見事勝利すると、
表彰台にてマリオファミリーに囲まれながらの祝福を受け、続けざまに物語冒頭からの出来事を振り返る”走馬灯”のような映像と共に、真のスタッフロールが流れます。
途中まで、マリオ達の存在なんてまったく関係のない場所と世界観の中でテニスに打ち込み、大会で優勝を目指すという純朴なストーリーでありながら、
最後の最後にはお馴染みのメンツが出てきて、雲の上にて最終勝負をする・・・
という物語構成は、見事でしたね。
お気付きの通り、全体に渡ってほぼ”試合曲の感想”ばかり述べてきましたが、
実際のところ、このゲームにおいて大半の時間は試合中の音楽を聞きながら過ごす事になるわけで、おのずと本作の魅力のほとんどは、それが占める事になるわけです。
(操作性とか攻略に関して語ろうと思っても、
「ネット際のプレイが強い」「スマッシュとドロップショットを使い分ければ、最後まで行ける」「コントロールを早めに上げると良い」くらいしか書く事がありませんし。)
なんと言っても、やはり本作の「アイランドオープン」における
一回戦と準決勝の、ワクワク感と熱さは凄いです。
あのワクワクを思い出したいが為に、いまだに音楽プレーヤーで聞く時もあります。
それと同時に、この”好きな事だけに無心になって打ち込める”という、それに特化された舞台設定から醸し出される、子供時代の感覚をそのまま形にしたような世界観と空気感が、
本当に愛おしいです。
今でも時々、時間を気にせずプレイできるのならば、またハマりたいなって思う事もありますよ。
でも、やっぱり今ではもう、感覚が変わっちゃってて無理なんでしょうねぇ。
そんな切なさを感じさせるのも、このゲームの魅力と面白さが本物であったからこそでしょう。
まさに”子供の感性”に沿って作られたようなゲームで、子供のうちにハマっておくべきゲームではありますが、今でも「アイランドオープン」戦での音楽は色あせない。
ゲーム音楽には、その作品の面白さを決定づけるほどの重要性があると思っていますが、本作は更にその割合が高く、クオリティ自体も極上の品質を誇ります。
そんな心躍る音楽の数々と共に、夢のような世界観にて、
ワクワク感と希望、そして情熱に満ちたテニスストーリーを味わえる、
任天堂の作風が滲み出た、古き良き”携帯型名作テニスゲーム”です。