「星のカービィ 夢の泉の物語」ラスボス戦前後の演出がキラリと光る、SFCクオリティなFCゲーム!
小さい頃からゲームが好きだという方は、自分にとって一番記憶に古い、
「人生で最初にクリアしたゲームタイトル」って覚えてますか?
私は(正直あやふやですが、ほぼ間違いなく)この作品。
”ファミリーコンピュータ”にて発売された、「星のカービィ 夢の泉の物語」です。
”カービィ”というキャラクターに関しては・・・おそらく、説明不要の領域でしょう。
その無尽蔵の食欲と、伸縮自在な球体の身体を活かして、敵を吸ったり吐いたり、はたまた吸い込んだ敵の能力を「コピー」して我が物とする特技を武器に、故郷「プププランド」の危機を何度も救っている、
ご存知”子供にとっての大人気ヒーロー”です。
昭和の終わり頃~平成生まれのゲーム好きの方ならば、誰でも一時期は”カービィが好きな子供時代”を過ごすものではないでしょうか。
少なくとも、私が保育園・小学校の頃に「カービィが嫌い」と言うような人物は、周囲に一人もいませんでした。
私も当時、保育園から帰った後、一目散にファミコンの元へと走って電源を付け、
毎日のようにこの「夢の泉の物語」で遊んでいたものです。
ストーリーは、プププランドの国王である「デデデ大王」が、国宝の「スターロッド」を盗んで手下達に分けてしまった事で、住民たちが毎晩楽しく見ていた”夢”が見られなくなってしまい、
皆の為にカービィが立ち上がる・・・と言った感じで始まります。
一見すると、デデデ大王による”タチの悪いイタズラ”のように思えますが、実は深~い事情があったのです。
そんな彼特有の行動原理と、カービィとのすれ違いによる物語が、
私が本作の評価を高めている大きな点となっています。(詳しくは後述致します)
ゲームとしては、1993年というファミコンも終焉に近付いた頃に発売された事で、
クオリティ的にはグラフィックと音源を除いて、ほとんどスーファミ作品みたいなゲームと言っても過言ではありません。
キャラクターの動きや画面のスクロールは非常に滑らかですし、カービィのコピー能力数自体も20種類以上と、後年に発売されたシリーズ作にも引けを取りません。
非常に頑丈で消えにくいバックアップ機能も完備されていますので、プレイ感覚としてはほぼ”ファミコンで遊ぶ、スーファミレベルのゲーム”という感じなのです。
本作の大きな特徴としては、この手の「面クリア型アクションゲーム」としては珍しく、
マップ画面もステージ中と同じような操作で移動する事ができ、
最初は壁によって大部分が隠されているマップを、各ステージをクリアする事によって徐々に広げて行く形式になっている点が挙げられます。
ステージによっては、時折「スイッチ」が隠されていて、これを見つけ出して踏む事で、
様々なボーナスエリアを発見する事ができます。
ちょっとした謎解きや、多少手強いアクションをこなさなければ到達できないスイッチも多いですが、これを網羅しないとマップ画面に壁を残したまま進んで行く事になってしまうので、
自ずと完全攻略にも力が入ります。
マップには、次なるステージだけでなく、息抜きの為の楽しいミニゲームが出現する事もあります。(その成績に応じて、残機もアップします)
↑の画像は、自分で自分の姿をした大小のぬいぐるみを、UFOキャッチャー方式で必死こいて取るという、まるでこの世の物とは思えぬ夢のような面白さを誇る「クレーンフィーバー」。
Aボタンでクレーンを動かし始めると鳴る
「テレ~テレッテッ テッテッテッテッ テェ~~~~!!」
という素敵な音楽が、より一層夢見心地な気分を誘います。
ミニゲームは他にも、相手よりも速く引き金を抜いて敵を倒す「早撃ちカービィ」、
爆弾を避けつつ卵を食べまくる「たまごきゃっちゃ」があり、
いずれもAボタンだけで遊べる、良質なミニゲーム群となっています。
難易度的には、「クリアだけなら簡単」とシリーズ通して評されるカービィのゲームだけあって、
ファミコンゲームとして見たら非常に親切で、簡単な部類です。
主人公である「カービィ」は、その見た目に反して敵の攻撃を五発まで耐えられる事に加えて、敵の出現数や攻撃もそれほど苛烈ではなく、
スイッチ探しで手こずったりしなければ、サクサクと先へと進んで行く事ができます。
↑の画像は、LEVEL3の「バタービルディング」ステージ。
シリーズ中でも屈指の名曲だと思っている、ステージ名がそのまま曲名にもなっている音楽が流れ、本作における中盤の名所となっています。
ただ、全体的に簡単だとは言っても、中盤からのボス戦自体は、子供の身にとってはちょっとだけ難しめ。
LEVEL3にて待ち受ける「ミスターシャイン&ブライト」は、月と太陽が一組となってコンビネーション攻撃を繰り出してくる強敵で、
慣れないうちは、私に代わって姉にプレイしてもらっていた記憶があります。
他にも、LEVEL4のボス「クラッコ」は、シリーズ通してお馴染みのボスですが、ボス戦にも関わらず”道中”が存在して、ハイジャンプの能力を使って上へと上がっていく必要がある点で異彩を放っていますし、
LEVEL5のボス「ヘビーモール」は、どんどん地形を掘り進めて行く為に強制スクロール形式のボス戦となっている等、以降のシリーズにも負けじと趣向が凝らされています。
また、今ではすっかりシリーズを代表する名キャラの一人となった「メタナイト」も、この作品から登場し、LEVEL6にて手強いボスとして待ち受けます。
後にスーファミで出た「スーパーデラックス」では、彼が用意した剣は取らずに待っている事で、元々持っていたコピー能力で戦う事も出来ましたが、
本作においては強制的にソード能力となって、互いに剣を持った戦いを繰り広げる事になります。
これがまぁ、強い。さすがのメタナイトである。
背面から切りつけないとロクに体力が減らせないし、他のボスと違ってダメージを与えるたびに「キャリーーン!!」と鳴って威圧感もあるし、
動き自体も厄介で、最善を尽くしてもダメージを喰らう時は喰らいます。
しかし、彼を倒せばいよいよ最後のマップ(LEVEL7)へ。
最後のマップだけあって、全体的に宇宙空間を連想させるような幻想的な終盤感を醸し出しており、ステージ自体も中ボスラッシュのタワーがあったりと、難関も。
それでいて、ラスボス戦手前に待ち受けるステージLEVEL7-7は、”白黒ゲームボーイ”で発売された前作である、初代「星のカービィ」のステージ構成を踏襲した、
画面自体もカービィを除いて白黒になるという、なかなかにシャレた演出のステージが待っています。
最初、「なんでここだけこんな(白黒で音楽の雰囲気も違う)んなんだろう?」と思っていたのですが、後に前作をやった時に「そういう事か!」と思いました。
さて、それではいよいよ本題に入ります。
私がこのゲームがシリーズ中でもトップクラスに好きな理由となっており、尚かつ非常に熱い点。
それは、LEVEL7にて「夢の泉」の前に立ち塞がるかのように待ち受ける「デデデ大王」との対決の直後から繰り広げられる、一連の演出にあります。
デデデ大王自体も、この時はまだ当たり判定が小さめで、小細工の無い真っ当な攻撃手段によって向かってくるので、シリーズ通しても強い方だと思います。
今回の騒動の原因である「デデデ大王」を倒し、
後は夢の泉に「スターロッド」を戻せば、全てが解決。
そのハズですが、画面上部には新たに”LEVEL8”と表示されています。
こらしめたハズのデデデ大王が、再び大ジャンプでやって来てカービィにしがみ付き、
「それを戻しちゃイカン!絶対にだ!!」
とでも言うようなジェスチャーをしてきます。
意に介せず、スターロッドを台座へと戻すべく、夢の泉に近付くカービィ。
それでもデデデ大王は、カービィを阻止しようとしがみ付きます。
「いい加減にしろ!!」と言わんばかりに、
”超威力の国宝”スターロッドを使って、大王を全力でぶっ飛ばすカービィ。
デデデ大王「Oh No!!!」
このピンクの男、いざとなったらいつも実力行使である。
颯爽と台座に飛び移り、スターロッドを元の場所へと戻すカービィ。
どんよりとしていた夢の泉も明るくなり、これにて一件落着。
しかし、それとは裏腹に、大王の顔は蒼白で、
なにやら恐怖と絶望にガタガタと震え始めます。
すると再び、夢の泉の様子が一変。
先程よりも更に暗く、不穏な空気が辺りを包み、
禍々しい巨大な球体が出現。
「え~らいこっちゃ え~らいこっちゃ」
「ほれ見い 言わんこっちゃね~にぃ~!!」
「なんで言わへんね~~ん!」
「止めても聞かへんかったやろ~がぁ~!!」
バタバタと仲良く混乱状態に陥る二人をよそに、謎の球体は遥か上空へ。
「こうなったら、もう行け!勝て!!」
そう言わんばかりに、大王はすかさずスターロッドごとカービィを吸い込み、
勢いよくヤツの向かった先へと送り出します。
そして始まる、LEVEL8という名の最終決戦。
まず第一形態、「ナイトメアーズパワーオーブ」と勝負。
これが強い。
今までのボスと比べ物にならないぐらいの耐久力があり、スターロッドによる星の弾丸を何十発と打ち込まなければ倒せません。
しかも、地面へと向かって徐々に落下しながら戦っているので、制限時間内に倒しきれないと
地面がせり上がってきて挟まれ、成すすべなく絶命してしまいます。
(勿論相手は逃亡)
”カービィのラスボス戦はシューティング形式になる”という、
シリーズ恒例のお決まりは、ここから既に存在しました。
なんとか倒すと、パワーオーブが逃走。
その際、落下してきた分だけ再び「グーーン!!」と上昇していく様子がグッド。
そして両者が向かった先は・・・月。
その最中、なにやら恐ろしげなシルエットに変形したナイトメアが、
カービィに向かって総攻撃を開始。
しかし、とうとう攻撃を許し、ワープスターが破壊され、月面に叩き落とされるカービィ。
そして遂に、その姿を現した恐怖の悪夢、
「ナイトメアウィザード」が出現!!
プププランドの平和を懸けた、最後の戦いが始まったのだ!!
・・・どうですか、この鳥肌モノの演出。
スターロッドを台座に戻す所もそうですが、この一連のデモは、
音楽と画面の動きが完全に合わさった演出になってるんですよ。それが熱い。
全体的に優しげな雰囲気と難易度なのに、ラスボス戦開始手前になって、
最後の最後の寸劇だけでここまで盛り上げるラストバトルというのは、
カービィシリーズに限らずとも、全アクションゲームにおいても、そうそう無いんじゃないでしょうか。
しかも、皆大好きなカービィというキャラクターで、これをやるっていうね。
それまでのほんわかとした雰囲気からの落差が大きいのもあって、より引き立ちます。
しかし、プレイ済みの方はご存知の通りだと思いますが、
ここに至るまで鳥肌立ちまくりの、完璧な盛り上げ方とは裏腹に、
くそみたいに弱い第二形態。
いやほんと、びっくりするぐらい弱い。
画面の左右どちらかの隅っこに陣取って、たま~にこちら目掛けて飛んでくる攻撃を適当にジャンプか空中浮遊で避けつつ、
ヤツが身体を見せた所に星を六発撃ち込むだけで、あっさりと勝てます。
ヘタしたら、最初のボスである「ウィスピーウッズ」と同じくらいの弱さかも。
弱点の身体をそれはまぁ~チラッチラチラッチラ、サービス満点の心意気で見せてくれるものだから、第一形態の強敵感はどこへ行ったんだってくらい、サクッと勝てます。
特に、弱点であるハズの身体を”ブオォォ~~っ!!”て見せびらかしながら
「さぁっ、絶好の攻撃チャンスだぜ!」って感じでゆっくり飛んでくるだけの攻撃パターンは、さすがに要らなかったんじゃないかなぁ・・・
まぁ、本来はきっと、もっととんでもない強敵だったんだろうけど、
国宝である「スターロッド」の威力が高すぎたんだ、って事にしておきましょう。
そんなこんなで、激闘のすえ(?)ナイトメアを倒したカービィ。
ヤツが消滅した衝撃によって、満月だった月が欠けて、三日月に!
これも粋な演出。まさに「星のカービィ」って事なのですかね。
全ての戦いが終わり、再び顔見せする「デデデ大王」と共に、地上へと戻っていくカービィ。
その際、この物語の全容が明かされ、デデデ大王は悪意のもとにスターロッドを奪ったのではなく、
ある日突然現れた「悪夢(ナイトメア)」に抵抗する為、ヤツが完全体とならないように、悪人と見られる事を承知で起こした、”彼なりの正義”の行動であった事が発覚します。
大王、キミってやつは・・・
なんて不器用なペンギンなんだ・・・
あと、ドン・キ〇ーテのやつに似てるよね・・・
そんな感じで、一国の主である「デデデ大王」の、人騒がせでありながらも自身の正義によって起こした行動から始まった、今回の事件も無事解決し、ゲームは終了。
エンディングの「きょうからは まくらをたかくして ねむりにつくことができそうです・・・」
という一文も、再び夢を見られるようになった事と、平和が戻った事を洒落た表現で、心地良い余韻をもたらしてくれます。
クリア後には、ミニゲームだけを遊べるモードやボスラッシュモード、
100%クリア達成で、体力三つで新たに挑む「エキストラモード」等も出現し、
まさにSFCクオリティと言って差し支えない、至れり尽くせりな仕様となっています。
保育園の頃の私でもクリアまで行けたほど、全体的に丁寧な作りで子供向けに調整された、
今の時代でも通用するんじゃないかと思うほどのクオリティの高さと完成度を誇る今作。
今でこそ、Wiiや3DSなどで正当な続編となる横スクロールアクションのカービィが発売されていますが、それらが発売されるまでの長い間、
あのSFCの名作「スーパーデラックス」と肩を並べられるのは、個人的には唯一、この作品だけだと思っていました。
GBAの「鏡の大迷宮」までならば、カービィと名の付くゲームは全てプレイしていた私ですが、ラストバトル前後の熱い演出が際立つ事から、私はこの「夢の泉の物語」が一番好きかもしれません。
(その後のシリーズにて無様に操られる事が多くなったデデデ大王が、正気を保って正義のもとに行動している数少ない作品であるという事が、特に大きな加点となっています。)
”カービィシリーズ”の二作目にして、当時の任天堂の本気が垣間見える本作。
ファミコンの限界に挑戦していた作品に興味のある方、またカービィが大好きながら未プレイの方には、古さに抵抗があるかとは思いますが、是非一度プレイしてみて頂きたい一品です。