「パワプロクンポケット3」元高校球児のサイボーグ主人公が、悪の組織プロペラ団に立ち向かう!
2001年、私が小学六年生の頃。
ゲームボーイカラーに続く、新たな携帯型ゲーム機「ゲームボーイアドバンス」が発売されました。
その大きな特徴は、携帯機でありながらもスーファミや64にも引けを取らない、
脅威的な音源(当時の感覚です)。それと、L・Rボタンの搭載。
その新鮮な体験と共に、私に新たなワクワク感と情熱を与えてくれたのが、
この「パワポケ3」でした。
触れるきっかけとなったのは、やはり前作「パワポケ2」を私に教えてくれたT君。
当時ゲームボーイカラーしか持っていなかった私に、わざわざ時々アドバンス本体ごと貸して遊ばせてくれました。なんて良い奴・・・!!
今回のストーリーは、至って真っ当だった前作とは異なり、
弱小野球部を甲子園優勝に導いた初代の主人公が、事故で死亡した後、サイボーグとなって復活するという、かなりぶっ飛んだ設定で始まります。
しかし、「1」をやった事がない私でも、
初代主人公のいきさつを語ってくれる昔話のような冒頭と、復活後は記憶を失っているという設定、そして有無を言わさぬ作品の雰囲気等から、前作と変わらぬ勢いでのめり込みました。
かつて共に野球部を優勝に導き、主人公を復活させた「亀田君」と、知人の「唐沢博士」によると、
世界のスポーツ界は「プロペラ団」という悪の組織に大半をコントロールされており、主人公はその組織との戦いの中で殺されたとの事。
奴らを倒して、公正なスポーツ界にする!そして全てを思い出して人間に戻る!
それが、今作の主人公の最終目的となります。
プロペラ団を倒す為には、毎年12月に行われる野球大会に出場して、優勝する事。
ついでにその島もぶっ壊して沈めてしまい、資金源を断つ事だと亀田君に提案された主人公は、彼の紹介のもと「火星オクトパス」への入団を目指す事になります。
入団後も、主人公の身に多少の一波乱があったり、ゲーム終了までに「記憶」のパラメーターを一定以上に上げたりする事が求められますが、
基本的には、野球の能力を高めていく事が大きなウェイトとなります。
では、主人公のやるべき事は何かと言うと、ただひたすらに「アルバイト」。
そのお金でパーツを買う事で、野球能力を強化する事ができるからです。
今作で最も印象に残るのが、このアルバイト作業でしょう。
良い選手を作ろうとするならば、数多く存在するアルバイトの中で実用的なのは、特定のアイテム所持で行える「トンネル工事」と「ボディーガード」の二種類のみ。
昇給システムの存在から、一つの仕事に絞って継続した方が良い為、
基本的には、このどちらかを延々と繰り返していくのがセオリーとなります。
しかし、これが最もパワポケ3を象徴する部分なのですが、
トンネル工事もボディーガードも、常に一定の確率で事故が発生し、発生すると「ショート」というバッドステータス状態になり、それと同時に
問答無用でパーツの一つが壊れます。
せっかくの高額パーツや特殊能力パーツが無慈悲にも壊れて、
思わずカートリッジが宙に飛んだ人も多いでしょう。私もその一人でした。(おい)
更に、ランダムイベントで唐突に雨が降ったり川に落ちたりする事でも、「サビつき」や「ショート」になってパーツが壊れる危険性があります。
そして「ショート」の状態で体力が尽きると、
ゴミ捨て場に放置されてゲームオーバーになります。
とにかく、なにかにつけてリスクが付きまとうのが、この「パワポケ3」の特徴です。
パーツ製を採用している事から、比較的強力な選手を育成しやすいのですが、それは非常にハイリスクハイリターンである事、運任せな要素が大きい事も意味するのです。
パーツを守る方法としては、バレンタインデーや誕生日に、女の子の好感度が高いと貰える「チョコレート」や「プレゼント」が、パーツが壊れる際に優先的に壊れてくれる効果があるので、
一つでも保持できていれば、精神的には大分ラクになります。
また、水が絡むイベントの被害を防ぐため「防水スプレー」という格安アイテムを多めに買っておいたり、
ランクの低い野球パーツや不要なアイテムがイベントで手に入っても、売らずに持っておいて身代わりになってくれるのを祈るという手段もあります。
このように、パワポケ3はとにかく金、金!!
そして隣り合わせの事故、事故!!
そこをいかにして、大事なパーツが破損する確率を少しでも下げるか、
更に定期的にお金の何割かを持っていく”亀田君による徴収被害”を抑えるか、という一連のやり繰りが、このゲームの面白さの大部分を占めているのです。
肝心の野球部分ですが、前作と比べると守備が自分で操作できるようになったり、なによりグラフィック面で目まぐるしい進化が見られますが、まだまだ粗削り。
まともに打つよりも「バント」した方がヒットになりやすく、試合シーンではただひたすらにLボタンでバントする事が安全策となります。(勝てばお金も入るからね)
新たに搭載されたLボタンは、バントの為に多用される事になるのでした。
そして、個人的に最も特筆すべきは、プロペラ団を撃破した後の物語のラストシーン。
自分が死んだのは単なる不慮の事故だった事を思い出した主人公は、ただ亀田君に利用されていただけだった事を告げられ、
彼が主人公から巻き上げたお金で制作していた世界征服用ロボット「ガンダーロボ」と対決する事になるという、衝撃の展開に。
勝負は「画面に指定されたボタンを素早く押す」という、
前作(+前々作)にもあった反射神経バトル。この時の音楽が
めちゃくちゃカッコ良く、鳥肌が立つぐらい盛り上がる。
これは本当に野球ゲームなのか?と思うところですが、
そんな事はよそに、イヤホンを付けて全神経を集中させて勝負に没頭し、勝って人間に戻るハッピーエンドを迎える事に、当時は夢中になりました。
なんならこの戦いの為だけに、選手の能力を捨ててサクセスに没頭していた事も。
実は「善悪値」のパラメーターを極端に上げるか下げるかする事で、このラストバトルは回避する事ができるのですが、
この戦いこそが「パワポケ3」最大の盛り上がり所だと思っていた私は、毎回ガンダーロボと戦って倒すエンディングを迎えていました。(勝てばお金も入るからね)
・・・と、このように随所に「これって本当に野球ゲームか?」と思わせる要素がふんだんに盛り込まれている今作。
とにもかくにもお金稼ぎ、そして常に付きまとう理不尽なギャンブル感が、この作品全体に漂う二大要素ですが、
危険を掻い潜りながら順調に進められている時の三年目の緊張感や、晴れて強力な選手が育成できた時の達成感は、唯一無二のものがあります。
それでも、運任せな要素があまりにも大きい事や、亀田君の非道さ、野球部分がまだまだ発展途上である事などから、
欠点も非常に多く、人を選びやすい作品である事は否定できません。
ですが、私は大学に入って暇を持て余していた頃に、
ふと思い出して再度この作品にハマった経験もある事から、独自の魅力と面白さ、そして中毒性も充分に備えた作品であると思います。
シリーズ史上最もめちゃくちゃで、且つパワポケらしさに溢れた作品は?
と聞かれたら、私はこの「パワポケ3」を挙げるでしょう。