「ワリオランド」孤高の男ワリオが、その身一つを武器に宝の島にて繰り広げる、夢と希望に満ちた冒険活劇!
今も昔もゲームが好きだという方には、子供の頃に出会って以来、
ずっと心の中にその存在を保ち続けて、精神的なエネルギーを送り続けてくれているような、
「自分にとって一番のゲームヒーロー」っていませんか?
私にはいます。
物心が付く以前に出会ってからというもの、いつも心の片隅に居て、
常に莫大なエネルギーを送ってくれている、「伝説のヒーロー」が。
そんな”唯一無二のヒーロー”の存在を、私に知らしめた”伝説のゲーム”が、
この「スーパーマリオランド3 ワリオランド」です。
まず最初に、この”ゲームカセットの絵”である。
まだ文字も読めない頃の私は、なにやらワクワクした顔の男が、タックルをするような姿勢で、勢いよくこちらに向かってやって来ているという感じのこの絵が、
強烈なインパクトを放っていました。
「ワリオ」という名前だから悪人だとか、見た目からしていかにも悪そうなヤツ・・・と言った印象は、当時の私はまったく抱かず、こういうデザインの
「夢と希望に溢れた、唯一無二のパワフルなヒーロー」という風に認識したのです。
そして今でも、そのイメージは変わっていません。
ゲームボーイの電源を付けると始まる、オープニングデモ。これがまず素晴らしい。
舞台は海。
広々とした海の地平線が映し出されており、じきに画面の左の方から、海賊船に乗った”アヒル”の敵キャラがゆっくりとやって来て、
「宝の島はどこだ?」という感じに、双眼鏡を取り出して景色を眺めます。
すると、アヒルが何かにびっくりして、危機的な音楽に切り替わると同時に、画面左へと引き返します。
何事だ?と思っていると、
「オレが先だーーーー!!!」と言わんばかりに、
ワリオが物凄いスピードでやって来て、アヒルを追いかけ回します。
さっきよりも距離が縮まっています。
引き続き、画面の右から逃げてくるアヒル。
しかし、ワリオが付いて来ません。姿を消してしまいました。
「あれっ、アイツいなくなったなぁ?」
と言うような面持ちで、後ろを向きながらゆっくりと進んでいると・・・
ワリオが逆から登場!!!
そのままタックルで「バスーーン!!」とぶつかり、アヒルを上空へとぶっ飛ばします。
その後、アヒルは”ゲームボーイの画面の枠にぶつかる”というメタ的表現を経た上で、画面の真ん中に転覆し、ワリオがその上に乗っかって、
上からタイトルロゴが「ガーーン!!」と落ちてきて、タイトル画面になります。
この掴み、完璧である。
ゲームが始まる前から、すでに敵を一匹倒してしまう事により、
ワリオの型破りさや生命的エネルギーの強さ、タックルでぶつかって敵を倒すという「豪快でカッコイイ」戦闘スタイルを颯爽と見せつけ、
なんとも夢と希望に溢れたゲームなのだという事を、一瞬にしてプレイヤーに知らしめるわけです。
ワリオという男が、一体どういうキャラクターなのかという事を一目でわからせる役目を持つ事からも、
このオープニングデモは非常に秀逸な出来映えだと思っています。
いざゲームが始まると、ワリオの凄さがまた一つ判明します。
この男、ゲーム中でも笑っています。
よく見てください。どこからどう見ても笑ってます。
半端な顔ではありません。しっかりとした顔で笑っているのです。
私はアクションゲームが好きで、今までそれなりに色んなタイトルをプレイしてきましたが、
”口元を閉めた状態で、口角が上がっている表情”の主人公なら数あれど、
これほどしっかりとした笑顔を常に携えた主人公というのは、他に類を見ません。
それが、当時の私にとって非常に強烈な印象を与え、
ワリオに対して強力な親しみを抱かせる、大きな要因となりました。
そして、攻撃方法も凄い。
Bボタンを押す事で「ズドドドド」とタックルを繰り出し、敵に激突する事で攻撃します。
倒した敵は画面外へと吹っ飛ぶほか、ステージのあちこちに存在するブロックを粉々に粉砕する事も出来ます。
表情に加えて、これも強烈なインパクトでした。
アクションゲームにおいて、何か武器を持っている主人公ならともかく、
何も持たない丸腰の主人公というのは、敵に対しては上から踏みつけたり、何かを投げつける事でしか倒せないというのが、大半の常識です。
ところが、彼は「真正面からその身体でぶつかる」という方法で、敵と戦う事ができるのです。
ゲームを開始して、私はこの最初の段階で既に、
ワリオに対して憧れのようなものすら抱いていたのかもしれません。
”マリオの派生作品”という事もあって、それにならったパワーアップ状態もあり、
ニンニクやブルの壺を取る事でブルワリオ、ジェットの壺を取ればジェットワリオ、ドラゴンの壺でドラゴンワリオになります。
ジェットワリオかドラゴンワリオの状態からニンニクを取ってもブルワリオになる事から、このゲームの”基本形態”はブルワリオである事が伺えるのですが、これが強い。
ジャンプ中に十字キーの下を押しながら地面に着地する事でヒップドロップをし、
振動波を起こして画面全体の敵をひっくり返して無力化する事ができます。
そこへタックルを「ズガーーン!!」とブチかましてぶっ飛ばしていく事で、敵キャラ達を軒並み蹴散らしてゆく事ができるのです。
基本的にはこのブルワリオと、無制限に空中ダッシュタックルを繰り出す事が出来るようになるジェットワリオを、状況に合わせて使い分けていくのが、このゲームの基本戦術となります。
ちなみに、名前的には一番強そうなドラゴンワリオは、ドラゴンの帽子を被って、そこから火を吹くという手段で攻撃を行うという形態ですが、一番使い所がありません。
メリットよりも、タックルが出来ない不自由さの方が目立ってしまうからです。
この事から、ワリオは己の身体が一番の武器、という事を強調した作りになっているのです。
ステージクリア時には、川を挟んだ向こうにいる敵に爆弾を投げて残機アップを狙うミニゲームと、
コインを賭けて倍額アップを狙うミニゲームに挑戦できます。
最良のエンディングを見るには、コインの取得枚数も関わってくるので、基本的にはコインミニゲームの方を多くプレイする事になるのですが、
成功しても失敗しても、彼は笑顔を崩しません。
例え失敗して、コインが半減してしょんぼりしている時ですらも、口は笑ったままなのです。
徹底して笑った顔を心掛けているのです。なかなか出来る芸当ではありません。
人生は山あり谷ありながらも、常に希望を絶やさないのです。
アクションゲーム自体の特徴としては、比較的序盤の方から難しめのステージが登場する事が挙げられます。
特に印象に残るのが、↑の画像の、凶悪ヅラのドッスンのような敵が後ろから迫って来つつ、途中からはそれに乗って進む事を強いられるステージ。
これ、WORLD1-4なんですよ。
こんな序盤から出てくるようなステージじゃないです。怖すぎます。
音楽も「テッテル↓テルツテェ~~↑♪」
と恐怖心を誘うようなメロディーで、当時保育園時代にプレイしていた私ならば、普通なら投げ出してしまうような恐ろしさです。
それでも私は、「やってやる!」という気分を持続できました。
何故なら、ワリオが笑った顔をしているからです。
「こんなものは屁でもねぇ、オレ様に任せておけ。」
と言われているような気さえしました。
だから最後まで、彼と一緒にこの冒険をやり遂げられたのです。
そして各WORLDの最後には、アクションゲーム恒例のボス戦となりますが、
ここにおいても、彼は異彩を放ちます。
そう、タックルです。
最初のボスである、凶悪ヅラの大きなノコノコ「トゲブロス」に対しても、
真正面からタックルでぶつかってダメージを与えられるのです。
・・・ボス戦ですよ?
こんな芸当が出来るアクションゲームの主人公なんて、他にいます?
ボスキャラを相手にタックルで戦えるというのは、
幼少の頃の私の目には非常に強烈に映り、心を大いに震わせたものです。
続くWORLD2のボス、巨大な二足歩行の牛「ビーフン」との戦い。
ここでも彼は、度肝を抜く戦法に出ます。
両手を挙げて「ウオオォォーーーー!!」と突撃してくるビーフンを、
こちらもそのままタックルで迎え撃ち、怯ませた後・・・
自分よりも二回りはデカイであろうその巨体を、片手で持ち上げ、
溶岩の中に落とすという手段を持って、撃破するのです。
その間、わずか五秒。
・・・二面のボスですよ?
二面のボスを、たった五秒で瞬殺するんですよ?
周り、溶岩なんですよ?落ちたら死ぬんですよ?
なのに、自分よりも遥かにバカデカイ牛の化け物を相手に、タックルで立ち向かえます??
普通できんだろ!!!
そんな芸当を、軽々とやってのける、このワリオという男。
その胸には、”壮大な夢と希望”、そして並々ならぬ”勇気と度胸”があるからこそ、
こんな常識破りの戦い方が出来るのでしょう。
私はここで、ワリオという男を「憧れのヒーロー」と認知するに至ったのです。
怪物たちも、「なんだか、ワリオというヤバイやつが来ている」と噂したのか、
次のWORLDからは、空中に浮いた敵キャラがステージボスとして登場します。
このゲーム、なんか全体的にボスキャラの顔が怖い。威圧感があります。
ワリオが元々ちょっと悪人ヅラだからなのか、応対する強敵達として、作中のボスキャラ達はそれ以上に怖い顔にしてあるのだと思います。
そんなめっちゃ怖いボスキャラ達に対して、
少しも動じずに笑顔で立ち向かい、悠然と勝ち続けていくワリオ。
その姿は、見る者(プレイヤー)に莫大な勇気とパワーを与えます。
これを「ヒーロー」と呼ばずして、他になんと呼ぶのか。私にはわからない。
そんな怪物たちとの死闘の最中にも、当初の目的である「お宝探し」に余念はありません。
元々、彼がこの島に一人でやって来たのは、島に眠るお宝の数々やコインを集め、
それを資金に自分のお城を建てる事。
実に夢がある話である。
(正確には、マリオの黄金像を盗んだ「ブラックシュガー団」という名の海賊団の噂を聞きつけ、海賊共が隠した財宝を横取りしに来たというストーリーらしいです。)
お宝が隠された部屋に侵入するには、同じステージにて存在する「鍵」が必要で、
辿り着くまでにちょっとした謎解きや、多少手強いアクションを要する場面が多いですが、それほど際立って難しい箇所は無かったように思います。
怪物との戦いをその身一つで制していく快進撃と、お宝を集める収集要素、
どちらも存分に楽しめるのが、本作「ワリオランド」の魅力なのです。
終盤に待ち受ける、強制スクロールも含んだ「列車」ステージでは、
ゲーム中で二か所しか聞けない、陽気でワクワク感に満ちた音楽が流れます。
普通、アクションゲームの終盤というのは、もっと難関っぽさを感じさせる威厳のある音楽だったり、勇敢さを醸し出す音楽だったりするのが相場だと思うのですが、
本作では、この列車ステージにて聞ける、
このゲームにおいて最も明るくワクワクとした音楽によって、「終盤だ!」という気分にさせるのです。
これは、主役を張っている男が、いつも笑顔を絶やさない”ワリオ”というキャラクターだからこそ成立している、
アクションゲーム史上においても非常に珍しい要素だと思っています。
この楽しい冒険が、まだまだ続けば良いのに。
けれども、目指す終着点は、もうすぐそこだ。
そんな風に、なんとも言えぬ気分にさせてくれます。
そうして迎える、冒険の果て。
海賊団の女頭領「キャプテン・シロップ」のもとに辿り着くと、
なにやら不穏なランプが置かれています。
「来たわね、ワリオ」
そう言わんばかりに、シロップがおもむろにランプをこすると・・・
まるで目を疑うかのような、巨大な図体をした魔人が登場。
しばらく応戦しても、中盤以降のボスキャラのように、投げつけられそうな物は出してこない。
勿論、持ち前のタックルも届かない。
そしてうかうかとしていると、ヤツが指先から次々と放つ火の玉によって、黒焦げにされてしまう。
・・・もはや打つ手はないのか。
普通はそう思うはず。
しかし、この男は諦めなかった。
床に転がっているランプを見るやいなや、「これを使えば何かが出来るのでは・・・?」と思ったのか、
こするのを通り越して、床に目がけて投げつけ始めたのである。
一度転がしただけでは、何も起きない。
では、二度、三度と続けてみてはどうだ?
彼は一心不乱にランプを拾い直しては、再び床へと放る。
そして何度か繰り返すと・・・
ランプの先から、一抹の雲が出たのだ!
「このオレ様が、このままくたばると思うなよ?」
そう言わんばかりの顔で、彼は颯爽と雲に飛び乗り・・・
「「ドズン!!!!!!」」
優に100kg以上はあろうかと言う、その全体重を持って、
魔人の頭を踏みつけにかかったのである。
これは痛い!!
魔人「ぐおおおおぉぉぉ!!!!」
しかしヤツも、この物語の最後を飾る強敵である。この程度ではビクともしない。
再び、何事も無かったかのように攻撃を再開する魔人。
ワリオも負けじと、ランプを床に転がし、雲を出す作業へ。
だが、雲はなかなか出ない。
戦いは持久戦へともつれ込む。
ヤツの火の玉攻撃や、雲が変形して形を得た小さな魔人の猛攻を避けつつ、転がすランプから雲が出るたび、
それに飛び乗って、魔人の頭を目がけて踏みつけ攻撃を仕掛けるワリオ。
それを六回繰り返した時・・・
魔人「ぐああああぁぁ、バカなあああぁぁぁ!!!!!」
ヤツは苦悶の表情と共に床へと落ち、消滅した!!
勝った・・・!!勝ったのだ!!!
勝ち目など存在しないかと思われた、この絶望的状況から始まった最後の戦いに、
ワリオは勝利したのだ!!
そして物語は、感動のフィナーレへ。
逃亡したキャプテン・シロップが残した巨大爆弾によって、「シロップ城」は崩壊。
その跡地から、ピーチ姫の姿をした巨大な黄金像が出現するも、
元々はマリオの物だったので、タイミングを見計らってヘリで現れたマリオが、
「ワリオ、ありがとな~~!」
と言わんばかりに片手を振り、持ち去っていく。
ワリオはそれを見て、「あれぇ~?」というポーズをした後、その場を後にする。
その帰り道にて、こっそりくすねていた先程のランプをこすると、
今度は自分が主人となったランプの魔人が再度現れ、
「あなたの望む物を、一つだけ差し上げましょう。
その代わり、それには相応のコインが必要です。」
という旨のジェスチャーをしてきます。
「わかったぜ~」と頷いたワリオは、今まで集めたお宝とコインが保管してある画面へと移動。
お宝の一つ一つが、ワリオの手に戻り、コインへと換算された後、
総額に応じてコイン袋が生成されます。
ここで、コイン袋がいくつになったかによって、エンディングでワリオが貰えるものが変化するのですが、
ここでは全てのお宝を入手し、且つコインを一万枚以上持っていた場合の、最高のエンディングになる流れとして話を進めます。
実に99999枚ものコインが入った、六つのコイン袋を魔人に渡すと、
上空へと放って、なにやら魔法を唱えます。
「用意できましたよ」と促され、画面の右方向へと進むワリオ。
一見、何もない所に案内されるも、徐々にワリオの身体が浮かび始め・・・
目の前には、自分の顔が描かれた大きな惑星が出現!!
そう、彼は自分の城どころか、
巨大な惑星を丸ごと一つ、我が物としてしまったのだ。
こうして、「お宝を集めて、自分のお城を建てる」という目的のもと始まった、彼の記念すべき第一回目の冒険は、その目標を遥かに超えて、
「惑星を一つ手に入れてしまう」という結末をもって、その幕を閉じたのである。
実に壮大で、夢のある作品である。
夢と希望に溢れた世界観だ。むしろ夢と希望しかない。
そして、その世界観をワリオ一人だけで構築しているというのが、私は凄いと思う。
どう考えても凄い。”ロマン”がある。
ただ主役を張った男が「ゲーム中、常に笑った顔をしていた」という一点だけで、
この作品全体に圧倒的なロマンが醸し出されていたのである。
”ロマン”があるという事が、私は人生において最も重要な事であると思っています。
私は初めてプレイした当時から、夢と希望に満ちたこの作品が大好きで、
保育園児の頃から小学校低学年までの間に、幾度となくプレイしました。
あまりに好き過ぎて、分岐するエンディングも、その頃に全て見ました。
下から、鳥の巣・大木をくり抜いただけの家・普通の家・戦国時代風の城・黄金城という結末で、
その後は一切再プレイしていないにも関わらず、いまだに全て覚えています。
「ゲームなんて、時間のムダ。」「意味が無い。」
そう思っている人も多いでしょうし、実際にそれは否定できない部分も大きいだろうと思います。
ですが、私はこの作品をプレイし、”ワリオ”というキャラクターに出会った事によって、
「人生とは、自らがワクワクする気持ちを保ち続ければ、決して捨てたものではない」
という持論を得て、それが許されるのもまた人生だと言う、確たる信念を形成する事が出来ました。
「三つ子の魂百まで」という言葉もあるように、私の基本的な感性や人格といったものの根幹は、大部分がこの作品によって形成され、今に至るまでほとんど変化していないと感じています。
このゲームをプレイする事でしか獲得できない人生観を、私は確かに得たのです。
そして、私にとっての伝説の男「ワリオ」は、
昔から今まで一貫して、私の心のヒーローであり続けています。
小さな画面で、色も白黒な、”ゲームボーイ”という名の携帯型ゲーム機。
そんな限られた表現の中で繰り広げられる、見た目には小さな冒険なのにも関わらず、その後の私の心に、決して途切れる事のない壮大なパワーと絆を与えてくれた男、ワリオ。
彼は確かに、その小さな画面の中に存在していたのです。
~~ちなみに、このゲームの発売から15年が経過したのち、
Wiiにて「大乱闘スマッシュブラザーズX」という名作対戦アクションゲームが発売されます。
私はその作品においてもまた、ワリオによって心に莫大なエネルギーを受け取る事になるのですが、その話はまたいずれ。